【プレス民主 号外 2005年6月版】

こみやま泰子

◆浮び上がる構図
 
 国会においては、郵政民営化法案の審議が続いていますが、特別委員会で明らかになってきたのは、竹中大臣の疑惑や小泉総理の執着心、そして分社化による国民へのメリットがないことなど、提出されている法案自体のずさんさばかりです。
 いいかげんな答弁が繰り返されると、国民の目を意図的に逸らそうとしているのだと感じます。ここから推測されるのは、財政投融資など郵貯・簡保をもとにして、道路公団の例にあるような天下り先の確保・お手盛り官製談合といった、特殊法人での利権に群がる仕組みを維持しようとしている構図でしょう。
 
◆民営化求める米国は公営
 
 よく民営化の成功例として「ドイツポスト」が挙げられますが、基本的に地続きの欧州大陸と8千の諸島から成る日本では、輸送コストも違い、比較対象にはなりません。また一旦郵便の民営化をしたが、結果として失敗し、後に更にコストを掛けて国有に戻している国も少なくない事はあまり知られていません。米国は日本に対して郵政民営化を要望していますが(要望の詳細はアメリカ大使館ホームページをご覧下さい)その米国の郵便事業は国有の公営事業です。何故、日本に対しては民営化を求めるのか。350兆円という郵貯に預けた日本国民の個人資産が米国証券市場・証券会社などに流れることが自国の利益になるからではないでしょうか。それでは日本にとっても利益になるのかといえば、答えは『NO』です。
 民営化しても特殊法人などへのお金の流れは変わらないし、ネットワークの維持のために巨額の赤字が発生し、公的資金で民間金融機関に投入したように、結局は税金で穴埋めする財政負担に繋がる危険があります。 
 
◆郵政三事業のあるべき姿
 
 本来、民間でできるものは民間で、という官と民の役割分担の考え方は正しいと思います。しかし、郵政公社の民営化を行うことが、そうした目的に即しているとは言えません。
 郵政三事業のうち郵便事業は、日本全国への情報伝達を可能にする基本的行政サービスであり、ユニバーサルサービスを守る為、政府が責任を持って行うべきでしょう。そして郵貯・簡保については、銀行業・保険業など既に民間企業が多数存在している中では、民営化ではなく、本来の補完としての規模の事業へ(現契約もあり移行には少々時間はかかりますが)規模の縮小を行うべきでしょう。
 このように公社を維持した上で、法案にあるように地域の利便に資する事業つまり民業圧迫に繋がりかねない民間参入をせず、民間が公(官)の分野に入れるような規制緩和を実施していくことの方が、より日本経済に活力を与えるのではないでしょうか。
 
◆国民を馬鹿にした政府の広報戦術・審議戦略
 
 それにしても竹中疑惑(先ずはこう呼ばしていただこう)で、政府から出てきた有限会社スリード、株式会社オフィスサンサーラからの「郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略(案) (2004.12.15) 」のターゲット戦略には、小泉内閣支持基盤は主婦層と子供、シルバー層で、具体的なことは分からないが小泉総理のキャラクターを支持する層であり、同図にIQが低いと記されるこうした層に徹底したラーニングプロモーションが必要と考えるとあります。主婦や高齢者層はIQが低いとしている事からも、明らかに国民を馬鹿にしているのには怒りを覚えます!
 竹中大臣とテリー伊藤氏が郵政民営化を肯定する1500百万部の宣伝チラシ配布は1億5000万円の随意契約で発注され、税金で支払われています。さらにこれら広報戦略には6億円にも上る各新聞社などへの広告料や折込料なども支出されています。(詳しくは原口一博衆議院議員のホームページで資料を見ることが出来ます。)
 郵政特別委員会では、大臣や官僚答弁が二転三転、原稿の棒読みと陳謝を繰り返す事態が連日起こり、その度に審議が中断します。
 私自身はまだ衆議院議員になって二年に達しませんが、先輩議員に聞いても、これだけ答弁者に起因する審議中断が頻繁に起こること自体異常であるのに、あまり報道されていません。このことも異常な事態だと感じます。虚偽の答弁をしても審議時間さえこなせば良いと考えているのでしょうか。年金審議のときも感じましたが与党・官僚による審議妨害戦術でさえあるのではないかと思います。 竹中疑惑は連日議論になっていますが、経済産業省の裏金問題が急に浮上して、竹中疑惑の記事は小さくなってしまいました。また急に審議を終結させ6月 27〜28日に行われる予定となっている地方公聴会直後に採決をしようという話まであります。何故、急ぐ必要があるのでしょう。皆さんも怪しいと思いませんか?
 
◆国民の無関心は政府に利するばかり
 
 国会は国民に対して責任を取るという、当たり前の議論すら出来なくなっています。先日、財務省から日本の国債発行残高が、781兆5517億円と発表されました。国民一人当たり612万円になります。小泉政権での派手なパフォーマンスと根拠のない期待感の裏で、巨額の負債増加と経済苦による自殺者増加、アジア諸国との関係悪化など厳しい現実があります。日本は経済的・政治的に危機的な状態にあると認識すべきでしょう。
 郵政民営化問題は、財務省のシナリオにより小泉・竹中という役者を前面に出した茶番劇です。問題の本質は、財務省・大蔵族と国民の戦いであることを肝に銘じていかなくてはなりません。
 私は、この現状を変えるには政権交代しかないと確信し、これからも精一杯活動してまいります。
 
 

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