2日、衆参の野党合同会派による緊急提言

こみやま泰子

 4月2日に衆参の野党合同会派は、「新型コロナウィルス感染症対策のための補正予算を含め取り組むべき対策について」を政府に申し入れた。この緊急提言の内容について紹介いたします。


2020年4月2日

補正予算を含め取り組むべき対策について(緊急提言)

 アベノミクスの下、実質賃金は低迷を続け、家計が傷んできた。そこに、輪をかけて、新型コロナウイルスによる経済活動の停滞が、家計を直撃している。また、3月 の日銀短観で景況感が7年ぶりにマイナスとなるなど、事業者にも深刻な打撃を与えている。
 現下の経済危機を乗り越えるためには、家計支援を中心に、事業者支援も含め、更なる緊急経済対策が必要である。対策は、「迅速」かつ「実効性」があり、「簡便」な手続きで済むものでなくてはならない。
 また、経済的減収に対する補てんがなければ、自粛要請は実効性のあるものとならない。「補てんなくして要請なし」の原則に基づいて対応を行うべきである。
 なお、国民への説明責任を果たすためにも、改正新型インフルエンザ特措法に基づく「緊急事態宣言」を行う際には、国会への報告は必須である。

【第1フェーズ:緊急対策期】

 活動自粛などにより、傷んだ家計を助け、生活を守るため、また、新型コロナウイルス拡大に伴う倒産・失業を防ぐため、速やかに下記の項目を中心とする支援策を実施すべきである。

1.家計支援

〇すべての国民に対して一人当たり10万円以上、総額十数兆円規模を現金で給付する。なお、給付金は課税対象とすることなどにより、実質的に高額所得者への給付金の減額を行う。
〇経済の落ち込みや家庭の置かれた状況に応じて、給付金は一回限りではなく、継続・上乗せすることも検討する。
〇所得税・住民税などの租税、社会保険料、公共料金等の支払い猶予を実施する。
〇家主に対する支援を前提として、家計の状況に応じた家賃への支援を実施する。
〇奨学金、教育ローン、住宅ローンなどの返済猶予を実施する。

2.事業継続支援

〇公的な窓口に資金繰り支援の問合せが殺到していることを踏まえ、政府の対策本部にコールセンターを設けるとともに、市町村だけではなく、地域金融機関でも資金繰り支援の手続きができるようにする。
〇雇用調整助成金の10/10補助、対象範囲拡大、手続き簡素化と早期支給を実施する。また、同助成金の申請さえすれば、受け取るまでの間、地域金融機関からつなぎ融資を受けられるようにする。
〇所得税・法人税・消費税などの租税、社会保険料、公共料金等の支払い猶予を実施する。
〇固定資産税や賃料など、事業継続にかかる固定費の支払い猶予・減免・補助を実施する。
〇資金繰り支援のための無利子・無担保融資の拡大・拡充、地域金融円滑化法(モラトリアム法)復活による償還免除等の大胆な措置を実施する。
〇イベント自粛・外出自粛要請により、芸能、音楽関連業、旅客・運輸・観光業を始め、様々な業種が影響を受けている。そうした状況も踏まえ、中小・小規模事業者(個人事業主・フリーランスを含む)に対し、簡素・迅速な手法によって、経済的な減収に応じた補てんを実施する。

3.医療支援

〇マスク、人工呼吸器、人工心肺、防護服、消毒用アルコールなどについて、生産可能な設備を持つ事業者に生産要請を行う。
〇一刻も早いワクチンと治療薬の開発のため、十分な支援を行う。

【第2フェーズ:活動再開期】

 新型コロナウイルス感染症が終息した際、経済の再興に向け、活発な活動の再開を 即時可能とする環境づくりが下記の通り必要である。 〇地域活性化の観点から、鉄道・飛行機・バス・タクシー・旅客船などの運賃・料金の補助、宿泊代の補助、高速料金の値下げ、ガソリン税等の引下げなどを検討する。

〇所得税・住民税、自動車関係諸税などの租税、社会保険料、公共料金等の負担軽減を検討する。

 上記第1フェーズ、第2フェーズのため、財政措置・金融措置それぞれ数十兆円規模の対策を講じるべきである。

 最初に指摘した通り、現下の危機より前から、実質賃金低迷により家計は傷み、非正規雇用増大などにより格差が拡がってきた。日本経済・社会を立て直し、景気回復・ 所得の底上げにつなげるため、下記の施策を実施すべきである。

〇家計支援を制度的に確立し、所得再分配機能を回復して中低所得者の底上げをするために、給付付き税額控除の導入を含め、所得税、法人税、消費税など、広く税制を見直す。
〇これを機に、国会・行政機関での会議、行政手続きを含め、社会全体のデジタル化を推進する。
〇時差出勤やテレワークなど、働き方改革を進める。

◇提出会派名
衆:立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム
参:立憲・国民.新緑風会・社民

緊急提言1
緊急提言2
緊急提言3

アーカイブ