平成25年11月21日 衆議院災害対策特別委員会速記録(議事速報)  この議事速報は、正規の会議録が発行されるまでの間、審議の参考に供するための未定稿版で、一般への公開用ではありません。  後刻速記録を調査して処置することとされた発言、理事会で協議することとされた発言等は、原発言のまま掲載しています。  今後、訂正、削除が行われる場合がありますので、審議の際の引用に当たっては正規の会議録と受け取られることのないようお願いいたします。 ○坂本委員長 次に、小宮山泰子君。 ○小宮山委員 本日最後の質問となりました。防災・減災に資する国土強靱化基本法案、また民主党から出ております国民生活強靱化のための防災・減災対策基本法案に対し、質問させていただきます。  けさの新聞でありましたけれども、首都直下地震の被害想定の見直しの方向性のような額が報道されておりました。今までの国想定の約三倍の三百兆円という大規模な経済被害が首都直下、マグニチュード七・三のもとで起こる、そんなようなニュースが出ておりました。  今回のこの法案が通ったならば、正直、過去の二回のもそうですけれども、相当な額が使われることになるし、必要なところは出さなければならないんだというふうに思っております。前回までの首都直下また南海トラフにおきましては、我が党の委員からも、二階先生には再三、無駄はないのかという質問もさせていただきました。そして二階先生からも、そんなことはないというふうにお言葉をいただいたところではありますが、無駄かどうかというのを決めるのはやはりそのときであり、また、法案というのは後世にも伝わっていくものでもあります。そういう意味では、初心と違うような使われ方をすることもあるのかと思います。  ただ、今回非常に感じているのは、この法案が通ることによって日本の国土がどうなっていくのかというところであり、また、先日ですが、十一月に入って、地球環境国際議員連盟等の主催する大変興味深い講演を聞くことがありました。これは、欧州環境庁のEU域内環境・政策・経済分析プロジェクトマネジャーのゴーム・ディエ氏の講演でありました。  この中には、グリーンインフラとグレーインフラという発想がございました。ダムや堤防、道路のようにコンクリート等でつくる従来型のインフラをグレーインフラストラクチャーと呼ぶのに対し、例えば湿地が持つ保湿機能や洪水を防止する機能などに着目し、都市計画や町づくりなどにおいて計画的に自然を配置するグリーンインフラストラクチャーという考え方がある、大変興味深く感じておりました。  現在、COP19が開催され、日本からも環境大臣も行かれております。また、フィリピンの代表の方が、やはり、温暖化、そういったものに歯どめをかけてほしいという切実な訴えをされたことが報道されておりました。  また、日本におきましても、リオ・プラス20の二〇一二年には、国連持続可能な開発会議の開催において、当時の外務大臣はスピーチで、未曽有の大震災を経験した国として、自然と調和した、真に持続可能な社会のあり方を見直すことが使命であるとスピーチされております。  現在の日本の成長戦略で掲げられているグリーンという考え方は、環境技術による新しい成長産業の創出に限定されており、自然という、大きな社会資本とも言えるものを持続的に利用し、あるいは保護、再生、また、資本として図っていくという視点には欠けているのではないかとこの講演を聞いて感じたものであります。  そこでまず、本年五月、欧州連合、EUではグリーンインフラ戦略を採択し、加盟国に積極的にグリーンインフラ整備を進めるように呼びかけていると聞いております。  この点に関しまして、グリーンインフラは、ややもすれば、自然を犠牲にし、完成と同時に劣化が始まり、維持、改修のために費用も必要となるグレーインフラと対比することでありますし、また、グリーンインフラは、時間の経過とともにさらにその機能や価値が高まっていき、防災、減災の効果も高くなるという特徴があると伺っております。  世界的にも今注目が来ていると思われますグリーンインフラの活用の現状について、どのように行われているのか、日本での取り組みもあわせましてお聞かせいただければと思います。 ○奥主政府参考人 お答えいたします。  今、先生の方から御指摘のありましたグリーンインフラについてでございます。  先生が御指摘されましたように、EUでは、EU生物多様性戦略に基づくEUグリーンインフラ戦略が本年五月に策定され、より経済的な災害対策手法として、主要政策へのグリーンインフラの組み込みや自然環境の再生等の事業実施も盛り込まれているところでございます。  また、アメリカにおきましては、洪水対策への緑地活用等を目的に、二〇〇八年に環境保護庁によりグリーンインフラ行動戦略が策定されたところでございまして、ニューヨーク市では、湿地の購入等により、洪水時の水量を調節するというような取り組みを進めているというふうに聞いておるところでございます。  また、二〇〇八年には、国連環境計画、国際自然保護連合等の国際機関により設立されました環境と災害リスク削減に関します国際パートナーシップにおきまして、生態系を活用しました防災、減災に関します事例収集でありますとか、政策提言等を進めているというところでございます。  我が国においてでございますけれども、東日本大震災の発生を契機といたしまして、自然は、恵みをもたらすだけでなく、時には大きな脅威となるということが再認識されたことを踏まえまして、生物多様性基本法に基づきます「生物多様性国家戦略二〇一二―二〇二〇」というものがございますけれども、そうしたことを踏まえまして、今後の自然共生のあり方を提示しているということでございます。  例えば、森林が台風や強風の被害を軽減したり、サンゴ礁が津波の被害を軽減するなど、自然生態系が有する防災、減災機能について指摘しまして、そういったような活用をしていくということが必要であるというようなことを述べているところでございます。  今月、宮城県の仙台市で、第一回のアジア国立公園会議を開催いたしました。会議参加者の合意によりまして、アジア保護地域憲章というものが採択されたところでございまして、保護地域が防災、減災、復興に果たす役割が強調されたところでございます。我が国といたしましても、来年十一月にオーストラリアで開催されます世界国立公園会議等の場を通じて、そのような取り組みを発信したいというふうに考えているところでございます。  我が国でも、こうした動きを踏まえまして、生態系の持つ防災、減災機能の評価を進めているところでございまして、それらを通じまして、自然環境を保全、再生することによるグリーンインフラの活用方策を検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。 ○古屋国務大臣 今冒頭で委員が、きょうの一部新聞の報道のことについて言及されましたけれども、これもあくまでも一学識経験者による試算であります。今、私どもは、中防会議の中の首都直下地震のワーキンググループで実は最終の被害想定の計算をしていまして、スーパーコンピューター「京」も駆使してかなり綿密な計算をしております。こういった一学者の試算とはもう全く一線を画しておりまして、我々の検討作業に一切影響を与えることはないということだけは申し上げておきます。 ○小宮山委員 試算という形で学者が出したということは私も承知をしております。先般の質疑のときに、十二月にきちんと中央防災会議の方から出てくることも理解しておりますが、それにしても、どちらにせよ、小さい額が出てくるわけもなく、前回と比べてどうなるかというのはまだ確かにわからないところでありますので、それはしっかりと待たせていただきたいと思います。  引き続きますけれども、環境省にはぜひ、時間の関係上、これは要望で終わらせますけれども、公園だけではないんです、大きな流れとしては、町のつくりだったりとかそういったところにもなっておりますので、国立公園だけではないということで、もう少し、またさらなる検討を深めていただきたいと思います。  そこで、両案の提出者の方に伺っていきたいと思います。  自民党案、民主党案の両案とも、基本的に、大規模自然災害に対して備えるべく、国土あるいは国民生活の強靱化を行おうとするものと捉えております。植物から成る自然の持続的な利用、保護、再生も、国土、国民生活の強靱化に資するものだと考えておりますが、このようなグリーンインフラの活用による防災、減災の社会基盤整備についてのお考えを伺わせていただければと思います。 ○高木(陽)議員 委員に一言申し上げたいんですけれども、自民党案じゃなくて、自公案ということでよろしくお願いしたいと思います。  グリーンインフラにつきましては、御指摘のように、自然災害に対する防災、減災の効果が期待できると認識しております。本法案におきましても、国土強靱化に関する施策の策定、実施に当たっての方針として、自然との共生及び環境との調和に配慮することを第九条の第三号に規定しているところでございますので、グリーンインフラの活用は国土強靱化の推進に寄与する、このように捉えております。 ○吉田議員 御指摘のように、グレーインフラと並んでグリーンインフラというのが極めて重要だという御指摘は重要な考え方だと思っております。  今回の大震災でも、江戸時代から育ててきた防潮林が各地で相当な減災効果を発揮したという事実もございました。  民主党案においても、自公案と同じく、自然との共生、環境との調和ということをうたって、コンクリートの防潮堤だけじゃなくて緑の防潮堤を積極的につくっていくべきだ、こう考えているところでございます。 ○小宮山委員 御指摘もありましたので、訂正をさせていただきたいと思います。自公案ということで、訂正をさせていただきます。  確かに、九条の三号に、地域の特性に応じて、自然との共生及び環境との調和に配慮するという言葉は入っています。そうではなくて、この場合のグリーンインフラ、今後、これからの時代であれば、配慮するのではなくて、積極的に活用するのでなければならないのかなというふうにも思っております。  この点に関しまして、ぜひ、強靱化担当大臣には、この九条の三号に示される自然との共生及び環境との調和への配慮として、どのような施策、事業などが想定されるのか、お伺いしたいと思います。 ○古屋国務大臣 今御答弁もありましたけれども、この九条三号で想定される事業といいますと、例えば具体例で申し上げますと、横浜国大の名誉教授、宮脇昭先生なんかがもう何十年にもわたって研究をされている、 いわゆるシイとかタブとかの針葉樹を海辺に何重にもわたって植林をする。そうすると、木の成長が非常に速い、根が下の方に行くそうですね。そうしますと、例えば、根っこだけ守る防潮堤にしておけば、実際に津波等々が来ても、我々の国土強靱化の考え方は致命傷を避けるというのが一つございますので、十分致命傷 を避けることができる。  失礼、私、今、針葉樹と言ってしまいましたか。  ごめんなさい、広葉樹でございます。  致命傷を避ける、それからもう一つ、平時にも効果があるという考え方が必要でございます。  そうすると、やはり自然環境にマッチした観光資源とか、まあ、南フランスの風景なんかを想定していただけるとおわかりいただけると思いますけれども、そういったようなことで、平時も活用できて、有事にもしっかり機能を発揮する、こういったものが具体例だというふうに思います。  もちろん、こういう取り組みは、費用対効果の視点からいっても十分に合理性があるというふうに私どもは考えておりまして、だからこそ、この九条の第三号、こういったものをしっかり反映して政策に取り組んでいくということは極めて重要であるというふうに認識をしております。 ○小宮山委員 大変多くの方が、グレーインフラになるのではないか、そういった心配もあるところでもございます。  二〇一二年にニューヨーク市がハリケーン・サンディに襲われたときも、復興計画としては、ア・ストロンガー・モア・レジリエント・ニューヨーク、より強く、より強靱なニューヨークへというのを発表されたそうであります。  EUも、町中に自然を創出していくことが、気候変動や災害による被害を抑え、農業や林業など多岐にわたる分野で経済的、社会的に大きな利益をもたらすとして、同年五月にはグリーンインフラストラクチャー戦略を採択したと聞いております。  日本でも、この法案を通し、こういった自然との共生、特に日本は自然と共生してきたこと、そして、特徴としては、何といっても、人の及ばないものがある、それは自然というものであって、そういうものに畏敬の念を抱けるというところが日本のすばらしさだと私は考えております。そういった観点から、これから自然と共生する日本の国土づくりというものにつながっていけばというふうに願いながら、私の質問とさせていただきます。  御清聴ありがとうございました。 ○坂本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午後三時五十二分散会